フロスト気質
「フロスト気質」"Hard Frost" R.D.ウィングフィールド(R.D.Wingfield)上下巻ですよ!なんと文庫本なのに1冊1,100円+税ですよ!なんて高い!!最近の創元推理文庫の海外ミステリって800円~1,100円なんだよなあ。。。ペンギンブックス買うのと変わらん!!
で、R.D.ウィングフィールドは亡くなってしまったらしいのです。「フロスト気質」がシリーズ4作目。翻訳されていないのはあと2作のみ。残念だ。読み応え満点なんだけれど。。。
さて、内容だ!って、教えられないけれど。ミステリーだから!!
解説の人がね、荻原浩って人なんだけれど、フロストが丸くなったとか、皆に受け入れられるようになって良かったね、フロスト警部って言っているのです。いやいや、フロスト警部は1作目から受け入れられているよ、市井の人々からは。そして、まじめに働く巡査部長や警官たちには。フロスト警部を受け入れないのは、出世主義の人とか、リスクを恐れるあまり何にもしない人たちです。
そう、下品だし、セクハラだし、規則は守らないし、人使い荒いし、事務処理もできません。署長の言うことは聞かないし。(でも、マレット署長の言うことは聞かない方がいい。本当にこんな人いたら、恐ろしいけれどね。少々ステレオタイプに描きすぎだけれど、まあ口ばっかりの何にもしない人。いや、むしろ邪魔をする。)しかし、フロスト警部は本質をつくのです。そう、理屈や規則や世渡りが重要なのではない。「フロスト気質」でもそう。大事なのは誘拐された少年を救うこと。その前では超過勤務手当てがどうとか、署長の許可を得てから動くとか、そんなことは吹っ飛ぶのですよ。だって、「今」なんだもの、今すぐに判断しないと遅いんだもの。大体、マレット署長と話をしていると、とにかく「失敗は許されん」とか、「そんな行き当たりばったりの作戦は無理に決まっている、私は何も聞いていない、失敗したらすべて君の責任だ」とかばっかり。署長たるもの責任を逃れられるわけないし、「失敗するな」とか「どうなっているんだ」とか、「怠慢だ」とか言ってうるさいばかりで、一体お前は何してるんだよ!?
そんなわけでフロストは走る、考える、あちこちに出かけいろいろな人の話を聞く。あいまに下品なジョークが飛び交う、エロチックな妄想が頭を行きかう、そして、寝ずに働くし、働かせる。けれど、実は普通の人々を、一般市民を、大事にしている。規則なんて曲げたって、大切なのは市井の人々ってわけ。でも、その一般市民を踏みにじるやつには容赦しないのです。証拠があろうが無かろうが、とことん追い詰めるわけです。
それが、一般市民にはわかる。警察仲間の部下たちも理解する。だから、フロスト警部はしょっちゅうピンチに陥るのだけれど、意外と部下に救われる。マレットには救われないけれどね。さらに、新参者で、何だこのでたらめな警部は、と思っていた巡査部長に見直されたりする。
荻原浩さん、だから今に始まったことではないのですよ。最初からです。フロストってそういう人。
ただなあ、フロスト警部シリーズの解説は、あえてフロストを駄目駄目に見せようとしている風が強いからなあ。確信犯なんだよね。